「モデルハウスは、とても良かった良かったよね」ここのところ、私たちは休日のたびにモデルハウスを訪ねて歩いていた。大手のハウスメーカーの展示場へも、もちろん足を運んでいる。住宅展示場は1度で複数社のモデルハウスを見ることが出来て便利なのだが、じっくりと細部まで見て説明を受けると結構疲れてしまうのだ。それにせっかくの休日をそれだけに割くわけにもいかない
本日のモデルハウス見学を終了し、私たちは自宅に戻ってひと息入れていた。帰りに展示場近くのパン屋さんで買ってきた焼きたてパンでブランチだ。コーヒーが落ちるのをぼんやりと見つめながら、私は今日見てきたモデルハウスのことを思い返していた。個人的な好みからだけ言ったら、今まで見てきた中で1番好みだった。設備は選べるし、最初からバリアフリーで建てられるところも。何よりも木材を多用していて、木の香りが漂ってきそうな造りであることが嬉しい。
「地元の工務店のモデルハウスも見てみたいな」夫がポツリと呟いた。「もういくつか選んであるんだ」今日もらってきたパンフレットのたぐいを資料スペースに積み上げながら、夫が言葉を続ける。「君が好きな木の家ということで言えば、地元では1番有名らしい」そこまで言うと、夫がちょっと笑って付け加える。「ついでと言ってはなんだけど、ログハウスも参考までに見ておきたい」住宅地にログハウスはどうなのという気がするけれど、周辺の状況や環境によっては、あり得ない話ではなかった。
「でもログハウスとなると、モデルハウスは近場にはないんじゃない?」コーヒーを注ぎながら、再び夫が微笑んだ。「その工務店ではログハウスも取り扱っていて、小さいけれどモデルハウスもあるそうだ」夫はその工務店に依頼したいと考えているのだろうか?ずいぶん手回しがいいことだが、夫にそう言わせるモデルハウスをぜひ見てみたい。「じゃあ来週はそこで」私たちは、ようやく人心地ついた気分だった。